プロ野球選手の肩や肘とランナーの脚は同じ
プロ野球の試合中継を注意深く見てみよう。
投球を終えたピッチャーが、ベンチ内や試合後のインタビューの際に、アイシングしている姿を見たことはないかな? 肩にアイスパッドをのせて、バンテージで固定しているよね。打撲や転倒などの突発的なアクシデントはなかったはずなのに……なぜだと思う?
アイシングには「筋肉の疲労を取り除く効果がある」からなんですよ。ケガをしたときの応急処置だけのものではなく、筋肉疲労の回復のために日常的に取り入れたいケアであることを理解してほしい。
投球とランニングは「同じ動作を繰り返す」という点で似ているね。
長時間の負荷をかけた筋肉は血流が悪くなり、疲労物質である乳酸がたまったままになっている。この疲労物質を体外に運び出すためには、血液の流れを良くする必要がある。
前回紹介したストレッチだけでなく、アイシングにも血行を促進する効果があります。というのは、アイシングで筋肉を冷やすと血管が収縮して一時的に血液循環は鈍ります。ただし、アイシングを終えると、逆に冷やす前よりも血行が良くなるリバウンド現象が起こるんだ。だから「疲労がたまっているなあ」「筋肉が固いなあ」と感じた部分は氷で冷やしてみよう。氷を取った後に、血行がよくなって、その部分がぽかぽかと温かくなるのを感じることができると思うよ。
さらに、アイシングは、軽い炎症を起こしてしまったときも有効だ。
冷やすことで、痛む感覚を鈍らせ、さらにダメージを受けた細胞が周辺の細胞にまで被害を広げることを食い止めることもできるからね。ただし、痛みがひかない場合は自分で判断せずに、お医者さんにきちんと診断してもらうようにしよう。アイシングは有効な疲労回復方法であるけれど、万能ではないからね。
アイシングの方法は「適温の氷」で10〜20分
日常的に行なうアイシングは、運動後にできる限り早いタイミングで行うのがベスト。だから、クーリングダウンのジョギングやストレッチを終えて、汗をかいたウエアを着替えた頃がいいね。
氷を入れたビニール袋を当てて冷やすのが一般的だけど、ビニール袋を用意するのが面倒なときもあるね。そういうときは、手に氷のブロックをひとつ持って、気になる部分を繰り返しなぞるだけでも効果があるんですよ。これなら、テレビを観ながらでも手軽にできるよね。時間は10 〜 20分が目安。一度、氷を離して、筋肉の温度が戻ってきたら、再度、氷で冷やす。これを数回繰り返すといい。
でも「冷やせば冷やすほどいいのか」というとそうではない。注意しなくちゃいけないのは、冷やしすぎて凍傷になってしまうこと。特に、冷やす氷の温度には注意しよう。アイシングに最も適した氷の温度は「表面が溶けて濡れている」状態(=0℃)のものなの。それより冷えている氷を使うと凍傷になっちゃう危険があるんだよ。氷やアイスノンを持ったときに、手にくっついちゃうようなのは温度が低すぎる。そういうときは、水で表面を濡らす、あるいは、ビニール袋に水も少し入れて氷水で行いましょう。
コールドスプレーと氷の違い
市民マラソン大会では、コースの途中でコールドスプレーを吹きかけてもらえるエイドステーションもあるね。でも、コールドスプレーは「瞬間的に冷やして痛みの感覚を麻痺させる」のに有効なのであって、血行を促進して疲労物質を取り除く、あるいは炎症を抑えるという点に関しては補いきれない。レース中に一時的に痛みを軽減させたいときはコールドスプレーに頼ってもいいと思うけれど、走った後はコールドスプレーで済ませずに氷を使おう。
熱中症にも有効なアイシング
ランナーとしてもうひとつ覚えておきたいのは、熱中症にもアイシングが有効なことだ。
これから夏に向けて暑くなります。梅雨時は、湿度も高くて熱が体内にこもるから危険ですね。
暑さに耐え切れず、めまいに襲われたり、気持ち悪くなったりすることがあるかもしれない。「日射病(熱射病)かな」と思う症状が出たら、十分な水分補給をすると共に、体を冷やすことも大切なんですよ。涼しい場所に移動して、脇の下や首などにアイスパックをあてて安静にして回復を待ちましょう。 |